雑観書留

基本的にオタ活で雑多なトピックについて書きたくなったときに使われます

μ's 劇場版 4DXをたくさん観た

はじめに

TVアニメ放送10周年を記念し、2024年3月15日から劇場版「ラブライブ!The School Idol Movie」が劇場で4DX 上映スタートしました。当初の発表では2週間限定で3/28までとのことでしたが、好評だったためか、一部の劇場で延長上映も決定しています。

『ラブライブ!The School Idol Movie』4DX上映特設サイト | ラブライブ!Official Web Site

私は3/31現在、9ヶ所の異なる劇場で計16回観ました。基本的に入場者特典が欲しかったことがたくさん行った一番の理由ではあるのですが、特典のためだけに観ないで帰るみたいなのは主義に反するので、基本的に全部ちゃんと観ています。 (スケジュールの都合で遅刻して入場してることはありました)

せっかくたくさん観に行ったので、アクション映画でもないμ'sの劇場版が4DX上映でどうなるのか、体験談や感想などを書き残すことで、行こうか迷っている方の参考になればと思います。ただし本記事では映画本編の内容のネタバレはもちろん、どこでどのような演出が行われたかにも言及しますので、まだ知りたくないという方はお気をつけください。

演出

4DXの全般の演出は各劇場のホームページなどで説明されています。

www.cinemasunshine.co.jp

今回のμ's 4DX上映ではその中でも、以下のような演出が使われています。

  • 座席が揺れる
  • 水がかかる
  • 風が当たる
  • 匂いがする
  • フラッシュ照明が光る
  • 泡がスクリーン前に出る

以下、今回の映画での実際の使われ方に絡めて演出ごとの効果を見ていきます。

座席が揺れる

座席の揺れ方にも主に2通りあります。1つは座席そのものが動いてジェットコースター (ほどではありませんが) のように揺れるパターン。もう1つは座席に内蔵された装置によって座面や背中の腰上あたりに振動を与えるパターンです。

座席そのものが動くパターンは、主にキャラクターの動きに連動するような動きが基本です。走っているシーンでは足に伝わる振動や体の動きを再現するように揺れたり、カメラワークの動きを再現したりすることで臨場感を与えます。個人的には、椅子が動くのは自分の意志ではないのに、自分の意志で走ったり踊ったりしているはずの場面で椅子が動くのは認識に齟齬が生じてそこまで没入感はありませんでした。また、物語は登場人物のつもりになってみるというよりは第三者や神視点から俯瞰してみるタイプなので、キャラクター自体の動きに連動する動き方は微妙でしたが、キャラクターになりきった視点で感情移入して観るタイプの方にはいいのかもしれません。

一方で、振動を与えるパターンでは、ライブシーンや劇伴の低音やリズムパートに合わせて振動します。これは実際のライブ会場に行ったとき、よい音響で体に振動が伝わる感覚の再現のような感じがして、個人的に好きです。劇伴でも揺れるので、普段劇伴を意識していない人が意識するきっかけになるという意味でもよいなと思います。

他にも、2つの動きを組み合わせてモノの動きを表現することもあります。例えば、劇場版には様々な乗り物のシーンが登場しますが、車に乗っているシーンでは定期的に揺れたり、飛行機のシーンでは継続的に微振動したり、電車のシーンでは不規則に揺れたり、などそれぞれの乗り物に乗っている感覚を動きを使い分けながら再現しています。

水が出る

主に雨のシーンで使われます。具体的にはハロ星と、女性シンガーに穂乃果の家の前で「飛べるよ」と言われた後に強風が吹くシーン。ハロ星では座席前から出る大粒の雨と壁面から出る霧状の雨の両方が使われていると思いますが、劇場や席によって結構当たり方が違うのであまり感じられないこともあります。強風シーンでは前から顔に水が吹きかけられるので、ここが一番水を強く感じるシーンかなと思います。この演出のおかげで、逆に現実の暴風雨のときに劇中のこのシーンが思い起こされるようになりました。

上映前に4DXの体験版が流れる劇場もあるのですが、実際のところ、そこが一番水がかかります。途中でこれを学習したので、右手側の肘掛けについている水の演出を制御するボタンを体験動画のときだけOFFにするようになりました。

風が出る

風は主に側壁面から出ます。主には実際に屋外で風が吹いているシーンで使われますが、車に乗っているシーンや走っているシーンなどの疾走感の表現だったり、風がないシーンでも屋外にいる気持ちよさを感じられるようなシーン (例えばFuture style) でも使われていると思います。

個人的に、μ'sに限らずラブライブ!シリーズにおいて風の表現が好きなので、それを肌で感じられるのは嬉しいです。「いい気持ち」という歌詞が印象的なSUNNY DAY SONGのラストで、気持ちよさそうな風に髪をなびかせるキャラクターと一緒に風に当たる瞬間は、本当に気持ちがいいです。

また、顔に風が当たるように前方から出るパターンもあります。主に踏み込んだりしたときに足元に風が起きるような描写のシーンで使われている、はずだと思うのですが、音は聞こえるのにどこに風が当たったのかわからないことが多く、正直何が起きているのか未だにこれが一番謎です。

匂いがする

食事のシーンや、屋外で緑があるシーンで主に用いられます。基本的に匂いは一種類で、匂い音痴なのでわかりませんが植物系の爽やかな匂いのように感じています。自然溢れるシーン、例えばニューヨークの公園でランニングをするシーンなどにとても合っていて好きです。一方で、スイーツがテーブルに並ぶシーンでも同じ匂いが使われたりするので、そこは少し違和感があります。

フラッシュ照明が光る

結構いろいろな使われ方をしていますが、ライブの特効として主に使われていると思います。煌びやかなAngelic Angelではこれでもかというくらい光ります。?←HEARTBEATの希ハートビームで光るのがかなり好きです。あと、個人的に面白いのは、?←HEARTBEATに入る直前ににこのサングラスが一瞬キラッと光るシーンでも照明が使われていること。劇場によって照明設備が若干異なり、両サイドの壁面にある場合と片側にしかない場合があるような気がしていますが、にこのサングラスが左手側 (にこの右目側) だけ光るのに合わせて、両側に照明がある場合は左手側の照明しか光っていないように見えて、細かなこだわりポイントかなと思います。(ちなみに上映前に出る富士山に松竹のロゴの映像も、左手から日が昇っているのに合わせて片側だけ光ってる気がします)

あとはカメラのフラッシュとしても使われていて、SUNNY DAY SONG披露後の記念撮影でも使われています。ここでフラッシュと写真を撮るという行為が結びついた印象になることで、その後の僕光で照明が光ったときにより「"いま" という一瞬を切り抜いてる感」が増すのも個人的好きポイントです。

泡がスクリーン前に出る

主にライブの特効の代替表現として使われていて、AAやサニソンの紙吹雪を表現したり、僕光のサビから出てくる綿毛を表現しているように思います。この演出は結構どの席から見るかで印象が変わると思うので、次の話題の方で触れていこうと思います。

劇場や座席の違い

違う劇場で観るごとに違いがあるなと感じるのですが、どちらかというと劇場というより座席の調子や自分のコンディションによって感じ方が変わってる部分の方が大きい感じもしています。そんな中で、どこで観るのがいいのかに関して少し自分なりに考えた結果をまとめてみようと思います。

座席の前後の違い

普通の映画だと真ん中辺りからやや後方辺りがいい席として取られる傾向にあると思いますが、基本的に観やすさは通常の映画と同じなので、それでよいと思います。ただ、この映画は観に行く方のほとんどが既に内容を知っていると思いますし円盤化もされているので、せっかくの大画面を最大限に活かして、好きなキャラがより大きく見える体験を追求して前の席を取るというのもアリだと思います。推しは大きければ大きいほどいいです。4DX固有の演出に関しては、前に行くほど泡の演出がはっきりと認識しやすくなりますが、フラッシュ演出は照明が中盤くらいの側面についている関係上、それより前に行くほど認識しづらくなります。一方で後ろに行くと照明演出を直接目で見られるようになりますが、泡は小さくなりすぎて場合によっては気付かないほどになります。

座席の左右の違い

4DX的な意味での真ん中と端の差は個人的に明確には感じ取れません。ただ、やはり真ん中寄りの席にしっかり効果を当てることを中心に設計されていると思うので、雨や風などの側面からの演出は真ん中の席の方がしっかり受け取れることが多い気がしています。完全に体感なので保証はありませんが。一方で端に行く明確なメリットはあまり感じられませんでした。強いて言うなら泡も側面から出るので、前方で端にいるとより大きく見られます。劇場によっては照明や泡の演出が片側からしか出ないことがある気がしていますが、特に泡は左手 (下手) からしか出ない劇場が多い印象です。劇場の特徴を把握しているなら、これらに合わせて左右を選ぶのもアリかもしれません。また、座席が4つ単位で連動して動いているので、劇場全体での左右よりも、4席のうちの端2席なのか真ん中2席なのかの方が、動きの感じ方には違いがあるかもしれません。

劇場ごとの違い

個人的に一番よかったと感じたのはユナイテッド・シネマ豊洲です。劇場や座席によって演出ごとの感じやすさが変わったりするのですが、ここで見たときはすべての演出がしっかり体感できてよかったです。特に泡は前述の通り左手からしか出ていないように見える劇場が多いのですが、ここでは左右両側から出ていて感動しました。

また、前述の通り個人的に風の演出が好きなので、風の強さがちょうどよかったイオンシネマみなとみらいも好印象でした。京都桂川の風もかなり好きだったのですが、風が出る前の設備の動作音がとても大きく、キャラクターの声や歌など、音も重要な要素であるラブライブ!とは相性が悪いなと感じました。

シネマサンシャイン平和島は揺れや振動などが大人しい印象でした。それこそ座席ごとの違いの方が大きいかもしれませんが。映画が観たいだけで4DXの演出にはそこまで興味がないという方向けによいかもしれません。

演出の個人的な好み

シートの揺れは全般的に没入感には繋がらなかったという話をしましたが、SUNNY DAY SONGの後にみんなで写真を撮るシーンで、μ'sのみんなが楽しすぎてふざけて体をぶつけ合って密着させるシーンがありましたが、そこでの揺れがとても好きでした。女の子に体が触れてる、みたいな変な意味ではなくて、体がぶつかるのも気にしないくらい楽しいとか、楽しすぎてなんだかくっつきたくなるみたいな空気感がすごく好きなシーンなので、そんな幸せな空間の一員になれたような気がしたのが嬉しかったです。

演出を入れすぎないところもよかったと思います。例えば、入れようと思えば

  • シャワーシーン (音が聞こえるだけ) で水を出す
  • 耳元で囁くシーンでフッと風をかける
  • キャラが近づいてきたシーンでいい匂いを出す

などもできなくはないと思いますが、そういうのがあると "癖" を感じてしまうだろうなと思うので、老若男女に愛されるこの映画にそういった要素がない方がいいと思っています。

それに近いものとしては、りんぱなが2人でホテルの部屋から夜景を見るシーン。ここで最後に凛が花陽に寄りかかるところは、座席を揺らして体がぶつかる衝撃を表現してもよさそうなものですが、"ありそうなのにない" ことで自分が2人の世界に入り込まずに見守っている感覚がより際立ったのがよかったです。

なくてよかったところとしては他にも、僕光は1番でみんなが踊ってるところではクライマックスを盛り上げるようにしっかりいろんな4DX演出が入るのですが、2番以降のクレジットに入ってからは演出がなくなる (匂いくらいはある) のも、ゆっくりじっくり曲に集中しながら、フィナーレに向けてこの映画や曲から感じた気持ちと向き合う時間にできてありがたいなと思います。

演出がないことによる表現を感じた印象的な別のシーンは、女性シンガーと再会したあと大きな水たまりを飛び越えようとするシーン。このシーンは4DX抜きでも元から、淡い色彩設計に加え、花びらが舞い散っているのに風の音が聞こえない静寂の中で足音だけが聞こえることによって、より非現実感が強調される演出だと思っています。4DXではこのシーンでは、風はありますが、匂いはありません。一面花畑で花びらも舞っているのに匂いがないこともまた、少し現実ではないような感覚を強めてくれています。このシーンは座席の演出もよくて、穂乃果が踏み切るところでポンと背中を押されるように座席が揺れた後、シートがゆっくり前傾して浮遊感を与えてくれます。この映画に背中を押してもらって自分もこれから飛べるような、そんな気持ちにさせてくれるところがとても好きです。

逆に、シーン上はなさそうなのに入っている演出として好きなのが、穂乃果が路上ライブをしている女性シンガーに初めて出会うシーンで、風が吹くところです。確かに屋外ではありますが髪などは揺れておらず、映像だけでは風を感じることはなかったシーンですが、ここでの風は道に迷った穂乃果の不安な心を吹き払うかのような、そして歌声に新鮮な衝撃を受けて心が攫われるような、そんな印象を与えてくれるのが好きです。

あったら嬉しかったけどなかったなという演出としては、冒頭の水たまりで穂乃果が転ぶシーンでの水です。確かにこのシーンでは背中から転んでいるので前から水がかかるのはおかしい、という気もするのですが、その直後で穂乃果は前髪から水を垂らしていますし、水浸しになってもまだ挑戦するという穂乃果の心情により近づいて観られるようになった気がするので、欲しかったです。

あとはめちゃくちゃ細かいですが、花陽が白米について熱く語って海未に迫るシーンで、テーブルに手をつくところでは揺れたのですが、その後海未にグイッと迫るところでもうひと振動欲しかったです。その方が、花陽の圧に気圧される海未の感覚により近づけたかなと思っています。

おわりに

個人的に4DXは、4DXそのものを楽しむというより、なぜこの演出が入れられたのか、あるいはなぜ入れなかったのか、などの演出意図から強調したいものを読み取るのが楽しかったなと思います。1回目はともかく、複数回見るとよりそういった視点から観るのが楽しくなっていきました。ある意味他のオタクの感想ブログを読むような感覚に近くて、「あなたはここが好きなのね」「ここではこういう風に感じたんだね」という解釈を作品を見ながらリアルタイムでできるのが楽しかったです。

まだ4DXで観てないよという方はもう少し気楽にありのままを受け止めればいいんじゃないかと思いますが、もう1回観ようかなと迷ってる方には、こういう楽しみ方もあるよというヒントになっていれば幸いです。